Last Updated 2022年8月4日
何故ナイフなのか
狩猟とナイフ。現代社会において、ナイフがこれほど実用的に使われるシーンがあるだろうか。
現代社会の生活では三徳包丁とカッターがあれば、大抵事足りる。カッターが日常生活で最強なのは疑うべくもない。刃渡りが欲しければ包丁、パワーが欲しければナタでいいだろう。
でも狩猟になるとナイフの存在、その性能が本当に必要になると個人的には思う。
もちろん解体は全てカッター派の人や骨すき派の人がいることは知っている。自分の師匠もカッター派だ。でもそれだけでは、効率よく全てを完了できないゆえ、手鋸やナタ、チェーンソーなど、まあいろいろ出てくることになる。
それはちょっとシンプルじゃない。山の中では、効率は最大化しつつ、できる限りシンプルでありたい。こんなときにもオッカムの剃刀の原則。説明力は最大に、AICは最小に。
ここまでは割と状況から生じた外因で、自分がナイフを使う根源的理由、内因は、ナイフが好きだからだと思う。
思えば小さい頃から道具が好きだった。道具を使えば、物を生み出せるのが素晴らしい。特に刃物は全てのマザーマシン。石刃に始まり人類が文明を築く第一歩から共にあっただろう道具だ。刃物は進化し、その形状に機能の全てを表現する。美しく感じる。
美しいとは言えど、使いもしない刃物、ナイフを蒐集するのはとても抵抗がある。ヤバいやつに見られかねないし、使われない道具は可哀想に思う。しかし、狩猟とは真っ当な理由を持って、ナイフの存在理由を存分に発揮できる数少ない場となる。
外因からも内因からもナイフがベスト。だから、山で獣と対峙するときにナイフを使いたいのだ。
狩猟で要求される刃物
自分は数年しか狩猟経験はない。銃の所持期間よりも解体経験の方が長いが、少ない経験だろう。そのなかでもいろいろ思うところがある。
- 止め刺し、放血:それなりの刃渡りと刃の強靱さを要求される。ナイフ、ナタならできる。包丁もギリ。
- 胸骨を割りたい:これは肋骨との接合部にある軟骨組織で切る事ができる。カッターだとたぶん刃が折れる。ナタでもよいがデカくて内臓が傷つく。なお、ガーバーなどが作っている専用の鋸もある。
- 頭骨を外したい:うまくやれば小さいカッターでもできる。が、たぶん折れる。また秋のオスは頭の後ろに泥の粒子を纏っていて、すぐ刃がダメになる。薄い刃物では厳しいだろう。
- 滑らかに皮を剥きたい:カッターは苦手。これはナイフに代替できる刃物ないかもしれない。
- 股関節なども分解したい:ナタでは刃が入らん。こじったりした時に耐えられる強靭さがほしい。
- 軽量化するのに脊柱も切断したい:まあ頑張ればカッターでも…。
- 大バラシ:少し繊細に切れないと余計なところを切ってしまう。包丁類かナイフだろう。
これらのタスクを最大効率かつ一本の道具で無理なくこなせるのはナイフでないかと思う。
エゾシカにはどんなナイフがいいのか
世の中には沢山のインフルエンサーさんがいて、皆さんナイフについて造詣の深い方が多い。
しかし、諸先輩方の話しに統一見解を見ないのは、それぞれのバックグラウンドが異なり、そもそもの条件が違うのだろう。
今回は、国内で1番デカいシカであるエゾシカを対象に、現場、もしくは全量回収した工場で、一本で前述の作業をこなすナイフを考えたい。想定するのはカッターとナタ斧の間を埋めるナイフだ。
- シースナイフであること:フォールディングは血肉が挟まり不潔。構造がシンプルであってほしい。
- 刃渡り:120〜130mm。このリーチが止めさし、放血、大バラシで有効に思う。難なく大きく深い背ロースも外せる。もし長ければ、ペングリップにする事で100mm程度のナイフにもなる。これ以上長いと短く持つのが辛い。
- 刃厚:4〜5mm。薄い方が切れ味、メンテナンス性に優れる。しかし、強さがない。繊細さを保ちつつ、多少の無理を通せる厚みは4mm台だろう。
- グラインド:コンベックスグラインドがやはり良い。
- 表面仕上げ:ミラーフィニッシュが良い。脂肪の剥離性がよく、現場で切れ味が低下しにくい。
- 鋼材:自分は154CM、CPM154が好きだ。高い硬度と靭性を持ち、高硬度でもエッジ保持性が良い鋼材がいい。いわゆるハイグレードのステンレス鋼なら要求を満たす気がしている。ELMAX、SPG2なども気になる。
- 熱処理の信頼性:これが結構大事。高いナイフは高いなりに品質管理がされていて、ちゃんと期待されるスペックが出ている。同じ鋼材なのにメーカーで品質が違ったりするのはそのせい。ちなみにBUCKの420HCは特別で、普通よりも高い性能が出ているらしい。
BOS熱処理
https://www.buckknives.com/about-knives/heat-treating/ - 硬度:HRC61以上。これくらいあれば、バリバリ胸骨割りしても、数頭捌ける。
- シース:カイデックスが快適。レザーシースで山行ってる人は手入れどうしてるのだろう?脂と血でコタコタにならんのだろうか?
- ブレードデザイン:シンプルなドロップポイントブレードがよい。余計な突起とかは体組織が付着して不潔。
- ハンドルデザイン:日本人には少々太いものがある。一番細い人差し指で保持するところが直径15~18mm程度が好きだ。素手でもグローブをしてても持ちやすい。
- 重量バランス:ややブレードヘビーな方が現場でシースから落ちにくい。ハンドルヘビーなオンタリオ TAK-1は3回くらい落として回収してる。
- 値段:10,000〜20,000円くらいの価格帯が妥当。実用品だしあまり高いものは嫌。この価格帯以下の数千円ファクトリーメイドナイフはギャンブル。当たればいいけど、外れたらゴミとなる。それ使うならカッターでいい。
結局、どこのナイフ?
以上の性能要求をごちゃごちゃ考えると、値段を無視すればバークリバーのナイフが最強になる。しかしマジで高い。もっと言えば国内流通ナイフはなんかみんな高い。
5〜6年前にはセールになってるアメリカナイフとか(オンタリオ TAK-1 MOD 154CMを持っている)お買い得だったが、最近酷く高い気がする。DLT Tradingから輸入すると多少マシになるが、今の円安では微妙かもしれない。
まあ永く使うからってことで、バークリバーをゴリゴリ使う財力のある方は問題ないだろう。でもなんかバークリバーを使うのはYouTubeの影響を受けてるんでしょ?と思われるのが癪だ。
まだ日本で全然知られてなくて、価格が安いが高品質なメーカーがいい。
その結果、自分がいまメインで使ってるのは、Ture Saber社のDelawareをミラーフィニッシュカスタムしたものにカイデックスシースを自作したセットだ。

https://www.dlttrading.com/true-saber-delaware-green-canvas-micarta-323
新しいメーカーで日本ではほぼ知られていないはず。2003年ころ元軍人Todd Wielinski氏が最高のナイフを追い求めて立ち上げたメーカーとのこと。このモデルのデザインは秀逸で大型の動物を解体するためにデザインされているとしか思えない。刃付けは繊細なコンベックスグラインドで、切れ味は、かなり鋭角に仕上げても長切れする。すごく品質が高い。
海外レビューはこちら
https://survivalcommonsense.com/best-hunting-knife-true-saber-shawnee/
欠点はやや繊細なブレードなのでブッシュクラフト的なサバイバル使用はやめた方がいいだろう。それはバークリバーのブラボーなどに分がある。
当初はサテンぽいヘアラインフィニッシュだったが、手違いがあり傷つけてしまったため、否応無しにミラーフィニッシュカスタムにした。大変だったがとても良かった。
いまの理想形に落ち着いた
いろいろ周り道をしたが、いまのナイフが一つの理想形に思える。何本もいろんな形状、鋼材のナイフに触れたお陰だ。不要なナイフは手放し、いまはメインサブの2本1組で、2セット維持している。全部違うナイフだ。
もうなにか起きてナイフを失わない限り、新しいナイフは買わないだろう。
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